第34回 山口県理学療法学術大会
大会長 市野 敏亮
「食べる」という行為は、人間の生理学的な側面から見て非常に重要です。食事を通じて私たちは栄養素を摂取し、身体の成長、修復、機能の維持に必要なエネルギーを得ており、「食べる」ことは生存と健康を支える基本的な活動と言えます。「食べる」行為は、認知、摂食、咀嚼、嚥下、姿勢、筋力などの様々な要素から構成され、その機能低下に対して、臨床場面では、作業療法士や言語聴覚士が中心となって介入する場合が多くあります。
しかし、理学療法士にとっても「食べること」は重要なテーマの一つです。理学療法を実施する際には、実施前の運動負荷量の設定、実施後の理学療法の効果、疲労や身体機能の回復を促進するために、患者の食事・栄養状況の管理が重要となります。また、病院に限らず、施設や在宅の場面においても他職種がいない環境が少なくなく、理学療法士としての関わりが必要な場合が多くあります。
近年の理学療法の分野では、脳血管障害や運動器疾患などの専門分化が進められていますが、その土台となる患者の栄養状態を作る「食べる」という行為について改めて着目し、理学療法士として何を捉え、何をすべきかを知ることは、理学療法の質の向上につながると考えます。
本学術大会は「食べるを支える理学療法」をテーマとし、人が生きる上で切り離すことのできない「食べる」という行為について、理学療法士として捉えるべき視点や知識を改めて共有し、良質で専門性の高い理学療法を提供する土台づくりをする機会とすることを目的として開催いたします。特別講演では大阪医療大学医療看護学部理学療法士の内田学氏に「嚥下機能障害に対する理学療法のエビデンスと具体的介入(仮)」、市民公開講座では一般社団法人オンライン臨床 代表理事の長岡菜都子氏をお招きし、「健康に食を楽しもう!~誤嚥のメカニズムとその予防法~(仮)」というテーマで理学療法士ならびに言語聴覚士の視点からご講演いただきます。また、一般演題発表(口演、ポスター)や県内会員による特別企画を通して、参加者相互の知見を深める所存です。
準備委員一同、皆様のご参加を心よりお待ちしております。下関でお会いできることを楽しみにしております。