大会長挨拶
日本ロールシャッハ学会第28回大会を2024年10月19日(土)・20日(日)に山梨英和大学(山梨県甲府市)にて開催させていただくことになりました。本大会のテーマは「これからの時代のロールシャッハ法:伝統・継承と多様性」としました。私たちが大切にしているロールシャッハ法は誕生から100年が過ぎてもその臨床ツールとしての輝きに変わりはないようで、クライアントのアセスメントや心理療法をはじめとするさまざまな臨床心理的なかかわりに非常に豊かで味わい深い理解をもたらしてくれます。その一方で、ロールシャッハ法があまり実施されなくなっているとも聞きます。公認心理師時代を迎えて、やらなければいけない業務が多くなり、時間と労力のかかるロールシャッハ法の実施が敬遠されがちであるとも言われます。ロールシャッハ法は多くの大学院で学ばれており、資格試験にも出るので一通り学ぶけれども、その有効性や意義がわかるようになるまで臨床実践を積むことができないと聞くこともあります。日頃から多忙で研修の時間・費用が潤沢でない若手・中堅がこの技法を修得しよう、研究しよう、続けようとしてもなかなかうまくいかないこともあるようです。本大会はこのような現状の中でのこれからの時代のロールシャッハ法を議論できる大会にしたいと考えています。
本大会のメインのシンポジウムは多くのロールシャッカーが経験するいわゆる貧困事例を取り上げます。「収縮的統制」「ハイラムダスタイル」「つぶれ型」と呼ばれるような決定因や反応内容に幅がなく、起伏に乏しい臨床群です。検査依頼者のニーズや本人の支援に役立てるために、検査結果からどのようなことを読み取れるかを議論したいと思います。ワークショップでは多様な技法やアプローチを学べるように、初学者向け・経験者向け・フィードバック・高齢者・コラージュ療法を取り上げました。もう一つのシンポジウムでは若手・中堅の学び・研修・研究の苦労を共有し、学会としてどのようなサポートが可能かを考えます。特別講演はこのたび本学会の名誉会員になられ、2023年に日本精神分析学会の学会賞(古澤賞)を受賞された私達の大先輩の深津千賀子先生と、新進気鋭の臨床家の東畑開人先生にお願いすることができました。
本学大学院は馬場禮子先生の教えを受け継いでおり、大会準備委員会にも縁のある先生方にご協力をいただいています。馬場先生がそうであられたように、伝統や継続も大切にするが、新しい観点や多様な流派や考え方も尊重し、学会が様々な出会いや交流が生まれる場としていきたいと考えています。多くのみなさまのご参加を大会実行委員会スタッフ一同、心からお待ち申し上げております。
日本ロールシャッハ学会第28回大会長 黒田浩司